みずたまり

はしりながらねむれ

杉原一司中心主義的年譜の改定

このブログに載せている(現代歌人集会春季大会シンポジウム2019年6月28日開催にて配付)「杉原一司中心主義的年譜」は、拙論「杉原一司のめざめー〈メトード〉前夜ー」(『塔』2017年10月号)に掲載したものにほぼ基づいている。そしてこのとき掲載し、またここに載せていた杉原一司の年譜は、竹内道夫『覚書杉原一司ー「花軸」「メトード」を中心に』(富士書店2000)を多くは参考にし、同時に前川佐美雄の歌集や年譜あるいは新聞などによる文献、小林幸子さんによる文章やお話、鳥取大学の岡村知子「杉原一司論(上)ー『メトード』にみる創作方法の模索と実践ー」(『論潮』10号2017)などを参考にしつつ作ったものだった。杉原家のある丹比駅へは何度も訪れたし(例えば、「歌人の最寄駅」『短歌』2018年7月号に丹比駅の写真と少しの文章を書いている)、佐美雄の歌碑を探して佐治の山の中まで行ったりもしたことがある。(同じように佐竹彌生についても)

 

佐竹彌生、杉原一司、そして田中大治郎は同じ鳥取で短歌をやっている者として後々研究したいという人が出てくることを願いつつ、せめてそれなりに資料だけでも整えておきたいと思って、ゆっくり少しずつではあるが動いていた。その過程で、何度か(いずれもアポ無しの突然ではあったが)、杉原家の玄関のベルを鳴らしたことがある。応答があったのは一度だけだった。いろいろな事情はあったのだろうがその時ぼくに何か資料をみせてくれたり、協力的な言葉をくれたりすることはなかった。似たようなことはあって、そのもっと前に郷土史家を訪れたときもやはり同じような対応だった。どうして気持ちが伝わらないのかと、どちらもとても残念に思ったことだった。人だけではなく、杉原一司の地元にある図書館に自分はこのような意図で資料を探しているのだがこれ(ぼくが持っている佐美雄と一司の資料リスト)以外に地元ならではの資料はないだろうかと相談したことがあった。地元だからこそと思ってのことであったが、しばらくして今後そのような質問は県立図書館へお願いします、という言葉がかえってきただけだった。

 

さてそれで、このたび、杉原一司歌集刊行会によって(著者名は杉原一司・杉原令子)『杉原一司歌集』が刊行された。刊行に至るプロセスにもいろいろあったそうだが(ぼくはタッチしていない)、ともかく地元でこのように形に残るものが作られたということがとてもうれしい。ぼくだけではなく鳥取を中心にして一緒に短歌の活動しているすべてのみずたまりあん(みずたまりのメンバー)にとっては特別におおきなよろこびである。なかでも、月刊みずたまりで一司の歌の連載をしていた小林貴文さんや佐竹彌生の歌の連載をしていた小谷奈央さんにあってはこころふるえるほどの励ましになっているだろう(彼と彼女の連載がぼくの励みになっていたように)。歌集に収められた歌は未発表の歌はほぼなく、すでに刊行されている「オレンヂ」「詩歌祭」「花軸」「メトード」に掲載された歌などが再録されている。また、(ぼくにとってはこれが一番の目玉なのだが)杉原家に残る資料から杉原ほさきさんと安藤隆一さんが「杉原一司関係年譜」をお作りになっている。ご家族が重い扉をあけて、このように動かれたわけだ。これは実にうれしい。そこで、この年譜とこれまでぼくが作っていた年譜を比較しここに修正を加えて掲載する。しばらくの間、加筆訂正箇所をピンク色にて示すことで、この度の『杉原一司歌集』の刊行をともによろこびあいたいと思う。ようやく一歩目が刻まれたのだ。うれしい♪

#杉原一司 #塚本邦雄 #鳥取 #丹比 #メトード #みずたまり #荻原伸

 

f:id:arakurenihonkai:20200419173322p:plain

2020年4月20日改定