みずたまり

はしりながらねむれ

佐太郎の鳥取砂丘

佐太郎の第6歌集『地表」の後半「昭和三十年」に「Ⅳ鳥取砂丘」という一連がある。
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・めのまへに厚らなる砂の丘(をか)いくつおほへる曇(くもり)海におよびて
・みづからは露(あら)はにて行く波形に風に吹かれしあとある砂丘(さきう)
・おのづから起伏(おきふし)つづく砂丘の谷(たに)あれば谷のたまつしづかさ
・砂丘(すなをか)の谷のひとところ松しげる古き松かさあまた落(おと)して
・砂おかはいづくともなく明るきに曇のなかに雲雀(ひばり)しき啼く
・おほどかに谷(たに)をたもてる砂丘(すなをか)にひとつ鴉(からす)は降りたちて啼く
・砂丘の低きところに現はれて水にじむ黒き岩を寂しむ
・砂丘のつづく虚(むな)しき中に来て憩ふいとまも旅のこころか
・砂に生ふるかすけき草を踏みてゆくさきゅう(さきう)のなかの谷の白砂
・砂照りて咲くアカシヤの白き花わがあゆみ来る砂丘(さきう)の終り
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作品としてはどうかな。である。
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